セリエ博士の本についての続きです。

前回、Barker仮説についても言及しましたが、ちなみにこのBarker仮説(バーカー仮説)というのは、一般にはほとんど知られていないようです。

私は、非常~~に、重要な概念だと思っているのですが、私が話をさせていただいた雑誌以外で、マスメディアなどで取り上げられているのを見たことがありません。

妊娠可能年齢の女性に、

「子どもの将来の健康に影響するから、ちゃんと栄養を摂りなさいよ!!」
と口を酸っぱくして言ったところで、儲かる人があまりいないということでしょう。

「I’mlovin‘it!」のコマーシャルと同じだけの時間、TVコマーシャルで流せば、日本の将来は確実に変わると思うのですが…。

さて、話は戻って、この本は決して「課題解明者より課題発見者のほうが優れている」ということを言いたい訳ではありません。

セリエ博士もおっしゃっていますが、副腎の存在を知ったからと言って、その後に引き続いて副腎の構造と機能、それが分泌するホルモンの単離と合成がなされなければ何にもなりません。

しかし、何かを発見しないことには新たな展開は得られない訳です。

そのような発見をするために必要な姿勢のひとつが、既成概念に囚われない、ということだと思います。

セリエ博士はこのようにも述べています。

「古風な博物学者流のやり方に対する世間の批判の第一は、何らのプランもなしに、また自分の感覚器官だけを用いて発見できる現象なら、もう全部誰かがすでに見つけて記載しているだろうといったところにあるようです。私はこの負け犬のような態度に組みしません。これと反対のことが毎日起きています。私はむしろ、それはいまはじまったばかりだと考えています。」

現代において私達は多くの既成概念に囚われています。既成概念に反した考えと言うのは「常識外である」「ものの本に載っていない」などの理由で否定されやすいものです。

そういう意味で「発見」というのはとても衝撃的で、意外性のあるものです。

セリエ博士のストレス学説、マーシャル博士のピロリ菌発見、バーカー博士のバーカー仮説など、どれをとっても、発表当初は奇想天外な説にしか見えなかったでしょう。受け入れられるのに相当な時間がかかったはずです。

そして今これに近い状態にあるのが、「低血糖症」の概念でしょう。

低血糖症に明らかな提唱者のような方がいるのかどうか、今それらに関係する本が手元にないので確かなことは言えないのですが(ごめんなさい)、低血糖症の概念はアメリカではだいぶ前から指摘されているようです。

糖質を摂りすぎることで血糖値が逆に低下する、というこの概念も、医学書には載っていないことなので、なかなか医療者には(むしろ医療者において特に)受け入れ難いものかもしれません。

しかし、低血糖症で苦しんでいる患者様がいらっしゃることは間違いようのない事実ですので、そのような既成概念に「負け犬のように組みする」ことなく、立ち向かっていかなければなりません。

(ちょっとオーバーですね…(^^ゞ)

セリエ博士の本についてはまだまだ続きます。

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