今、なぜ栄養療法なのか?(3) ~Where are the BODIES ? ~
こんばんは。
本当に寒い日が続きますね。
冷え性の女性にはつらいシーズンです。
ちなみに、冷え性に栄養療法はとっても効果的です。
(経験者は語る)
詳しくはまたの機会に。
さて、これまで、分子整合栄養医学(分子栄養学)とは何ぞや、と言うことを説明してきました。
今までのポイントは、分子栄養学にもとづく栄養療法とは、「至適量の栄養素を補給することによって、異常な分子を正常化し、体の調節機能を整えて、病気の治療・予防をする」治療法だということです。
具体的な治療は、サプリメントの摂取によって行われます。
そして、栄養療法が食事療法と違っている点、また市販のサプリメントを買って飲むこととも違う重要な点は、「栄養素の量」にあります。
栄養療法において、もっとも重要なのがその「量」であり、そして最も誤解されているのも「量」なのです。
今日はその「量」についての話をしたいと思います。
皆さんご存知のように、栄養には必要栄養所要量というのが定められており、それに沿って栄養を摂りましょう、ということに一般的にはなっています。
しかし分子栄養学に基づく栄養療法では、必要栄養所要量に比べると、ケタ違いに多い量の栄養素を治療に用います。
このことから、分子栄養学は「メガビタミン療法」「ビタミン大量療法」などと呼ばれ、その量が非難の的になってきたという歴史があります(今でもです!)。
しかし、分子栄養学の目的と概念から考えると、60兆個あると言われる人間の細胞を望ましい状態に整えるためには、栄養所要量に定められているような微量の栄養素(ビタミンB1なら1日1mg程度)では、到底まかないきれない、というのが実際のところなのです。
そもそもビタミンの発見は、ビタミン欠乏症の研究から始まっています。
壊血病、脚気、ペラグラ、くる病、夜盲症(鳥目)、悪性貧血など。
これらは今でこそ、ビタミンの欠乏症だということは常識になっていますが、昔は原因が全くわからない「奇病・難病」とされていた病気です。
その病気を研究していったら、ビタミンと言うものがあって、それが不足しているために起こっている病態なのだ、ということがわかり、ビタミンは発見されてきたわけです。
ビタミンの歴史は、言うなればビタミン欠乏症の歴史なのです。
こういう経緯から、栄養所要量は定められています。
つまり必要栄養所要量とは、「欠乏症を防ぐための量」なのです。
そして、この栄養所要量がきちんと摂れればOK、とするのが旧来の栄養学の考え方なわけです。
(ちなみに日本人の平均的な食事ではこの量すらも充分に摂れていないということが明らかになっています)
しかし、分子整合栄養医学の目的はあくまでも「欠乏症を防ぐ」ことではないのです。
欠乏症を防ぐというレベルを超えて、「体の調節機能を高めて疾患の予防・治療を行う」ことが目的ですから、そのために必要な栄養素の量は、栄養所要量の100倍以上になる場合もあります。(当然食事だけでは摂れません!)
栄養療法の効果は「用量依存性」であり、そのような量の栄養素を使わないと治療効果は実際には現れないのです。
そしてそのような(旧来の概念からすれば)大量のビタミンを治療に使っても、現実には副作用はほとんど起こりません。(起こるとすればサプリメントの質的な問題があると考えられます)
巷ではもっともらしく「ビタミン過剰症」についての危険性が取り沙汰されていますが、ここは非常に誤解をされているところです。
栄養学とは突き詰めれば生化学・生理学であり、その分野は常に進歩しています。そして栄養素が果たす役割の大きさが日々明らかになっています。
そして栄養素に、今まで常識的に捉えられていた以上の様々な治療的な効果がある、ということがわかってきているのです。
それでも、一度定着した固定概念を払拭することはなかなか難しいようで、栄養所要量以上の多いビタミンを摂ると過剰症が起こり、危険である、と、いまだに言う人たちがいます。
そのような意見に対して、我々栄養素を治療の武器とする医師たちは、こう答えます。
「Where are theBODIES?」
ビタミンを大量に摂取して死んだ遺体はどこにあるのか?と。
アメリカにおける薬害による死亡者数が年間10万人を超えている(Starfield B. JAMA 2000, 284, 483.)ことを考えれば、栄養素による治療がいかに安全であるかは明白です。
また、十分でない量の栄養素を摂っても意味がないとは言いませんが、治療効果は望めません。
私たち現代人は毎日の生活の中で、栄養素が脱落した不自然で非生理的な食べ物を食べ、運動もせず、ストレスに晒され、たくさんの有害物質を体に取り込んでいます。
病気までは行かなくても、体内の分子には既に変化が起きている人がほとんどだと言えます。
だからこそ、栄養療法が効果を発揮するのです。
またまた長くなってしまいました。
分子整合栄養医学に基づく栄養療法について、ご理解をいただければ幸いです。
今後は具体的な症例などについてもお話していきたいと思います。