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NEWS & BLOG | エッセイ「変わった医者」(4)

変わった医者(4)

(2026年10月 最新の研究を追記) HYGEIA通信

この記事でわかること

  1. 増永氏は、東洋医学の切診は西洋医学の触診とは別物で、生命の共感にもとづくと述べています。
  2. 東洋医学の特質は、治療する人と患者の間に起こる共感、心の交流にあると紹介しています。
  3. 治療がうまくいくと治療する側も心地よくなる、と筆者は書き、双方向の医療だとしています。

増永氏はこの本で、もうひとつの重要な東洋医学の特質についても述べている。 東洋医学の治療の根本は、経絡の異常を診断して調整をすることであるが、その基本は患者の体に触れることである。手を当て、異常を察知し、そして手を当てている行為そのものが即治療となる。その際の診断は、西洋医学の触診とはまったく意を異にするもので、これを切診と呼んでいる。

「近時この切診を応々西洋医学の触診と混同して理解されているようだが、触とは自他対立の感覚であるのに反し、切は接であり自他共感の支えによって成り立つことが忘れられている。切脈の場合に指先にふれているのは、その脈管の状態ではなくて、そこから全身の状態を共感する感覚である。触覚が高等な判別性感覚によっているのに対し、切診に働いているのは原始感覚による生命共感なのである。」

氏は、東洋医学と西洋医学の本質的な違いは、治療者と患者の間に起こる生命を持つもの同士の「共感」にあるという。言い換えれば心の交流といってもいいだろう。詳しくは省略するが、西洋医学的な触診に必要とされるものは触覚という判別性感覚であり、東洋医学の切診に必要とされるのは原始感覚であると氏は説明する。治療の対象として病変を見る西洋医学の立場とは違い、東洋医学の特質は原始感覚を用いて患者の体全体の「生命状態を共感」し、その立場を持って治療することにあるという。

「生体の歪みに対して、経穴は内蔵へ向かって液性伝導を行うのであるが、これを人為的に代行したとき、経絡のヒビキがおこると考えるのが妥当であろう。代行の仕方は人為的といっても自然に近い生命的なものでないといけない。経絡を上手に捉えられたのはこの東洋の自然生命観からの必然の帰結であったのだろう。私はこのような東洋の心がツボをとらえるためには一番大切だと考えている。ツボをとるときには探ってはいけない。盲人が手さぐりするのは触覚を鋭敏にし、物を判別しようとするからだが、その疑いの心から科学は発達し得ても、生命を摑むことはできない。生命には生命でもって対しなければならないのであって、ツボを知るのは原始感覚によって感じとるのである。患者の身になってというが、病苦に悩む心を知るのは生命共感のスキンシップである。スキンタッチは皮膚接触と訳されるが、生命共感のタッチとは深く挿入される接合である。皮膚にくい入る安定圧であり、しっかり抱き合う皮膚密着でないといけない。これを端的に示すのが握手である。握手は手の感触を判別するのではなく、手を通して心を感じ合うのである。このような皮膚結合によって生命共感は得られ、その原始感覚を通してツボは実感される。指はツボをおさえるのではなく、ツボに受取られて自づとツボにはまるのである。」

東洋医学的な思想のもとでは、人を治すのはあくまでも人である。皮膚を介した人間同士の心の交流があってこそ、患者の治る力が働くのである。それは決して一方通行ではなく、相互の作用がある。今風の言葉に直せば、インタラクティブな医療、とでも言おうか。不思議なことに実際、治療がうまくいったときは、治療をしている自分までも気持ちが良くなってしまう。これはこのような治療が一方的なものではなく、患者と医療者のコミュニケーション(言葉だけではない)である証拠のひとつだろう。現代医療では忘れられがちな、医療の根源的な部分が、そこにはある。

21世紀は心の時代であるとか、東洋の時代であるといわれるが、このような東洋医学の考え方は非常に21世紀的である、と思うのは私だけだろうか。

まだまだつづく。

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最新の研究でわかっていること(2026年10月 追記)

2006年の記事に追記

医療者の共感や前向きな言葉かけは、痛みや不安を少し和らげることが試験で示されています。体に触れるケアにも、痛みや不安を減らす効果が報告されています。

  • 共感や前向きな言葉かけを調べた28のランダム化試験の解析です。共感のある診察は、痛みや不安、満足度を小さいながら改善しました。害は見られませんでした。出典:Howick ほか, J R Soc Med 2018/PubMed 29672201・DOI 10.1177/0141076818769477
  • 触れるケアを調べた137の研究の解析です。成人では痛みや抑うつ感、不安が減っていました。家族が触れても医療者が触れても、効果に差はありませんでした。条件を伏せて比べにくい点には注意が要ります。出典:Packheiser ほか, Nat Hum Behav 2024/PubMed 38589702・DOI 10.1038/s41562-024-01841-8

PubMed の抄録で、数字と結論を確かめた論文だけを載せています(PMID・DOI つき)。上の本文は 2006 年に書かれたままです。

当院でできること

検査と治療
60項目以上の血液・尿検査で、貯蔵鉄・たんぱく質・ビタミン・亜鉛・血糖の動きを確かめ、不足している栄養素(治療用サプリメント)と食事の見直しで体の側を整えます。約3か月ごとに再検査します。
費用(自由診療・税込)
初日の検査 16,500円/再検査 11,000〜16,500円/診察料 5,500円。治療中の月あたりの費用は処方で変わります(最初の3か月は月5〜10万円が目安)。くわしくは 治療費用。
治療を検討する前に知っておいていただきたいこと
自由診療で、保険診療の代わりになる治療ではありません。分子栄養療法は、すべての方に同じ結果が出る治療ではなく、記事の中の例は個別の経過で、同じ結果を約束するものではありません。治療用サプリメントで起こりうること:まれに、IgG 食物アレルギー反応(食べ物に対する遅れて出る反応)が出ることがあります。

執筆・監修:矢崎 智子 医師(2006年の本文)|杏林大学医学部卒業の産婦人科医。2005年にハイジーア外来を開設し、院長として分子整合栄養医学と東洋医学による診療を行った
2026年10月の追記(最新の研究)の監修:秦 俊昭 医師(日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・ハイジーア外来 担当)

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よく聞かれること

切診とは何ですか?
患者さまの体に直接触れて、全身の状態を感じ取る東洋医学の診察法です。脈を診る切脈も含まれます。
医師の共感は、治療の結果に影響しますか?
共感のある診察で、痛みや不安が少し和らいだという試験のまとめがあります。効果は小さく、治療そのものの代わりにはなりません。
費用はどのくらいかかりますか
自由診療です。初日の検査 16,500円(税込)。治療中の費用は処方の内容で変わります。治療費用 をご覧ください。

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