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NEWS & BLOG | 日産婦シンポジウムの連載(演題2・前半)

日産婦シンポジウム 「妊娠と栄養・代謝」② 1/2

(2026年10月 最新の研究を追記) HYGEIA通信

この記事でわかること

  1. 厚生省は2000年に、妊娠を計画する女性は1日400μgの葉酸をとるよう勧告しました。
  2. 神経管閉鎖障害(NTD)は二分脊椎症や無脳症などで、最も多いのは二分脊椎症です。
  3. 日本のNTDは1974〜1979年の1万対2.0程度から、1998年には1万対6.0に増えたとされます。
  4. 妊娠に気づく頃には臨界期(妊娠7週まで)を過ぎていることが多く、妊娠前からの摂取が要ります。

某カップ麺のコマーシャルは非常に上手ですね。

アニメを使って、若者が商品をつい手に取りたくなるような印象的なCMを作っています。

若者の栄養状態をわざわざ悪くするような商品を、莫大な宣伝費用をかけて広告することは決して犯罪行為でも何でもないですし、どんな食べ物を食べるかは選ぶ消費者に責任があるのはもちろんですが、私たちはそういった宣伝広告にいかに大きな影響を受けているか(私が言いたいのは悪いほうですが)を認識する必要があります。

正しい知識を持ち、TVコマーシャルの奴隷にはならないことが必要です。

さて、日産婦のシンポジウムの続きです。

演題2 妊娠女性・若年女性における葉酸栄養状況とその効果に関する研究

演者 横浜市立大学付属市民総合医療センター 母子医療センター 石川浩史先生
要約する前に、まず葉酸と妊婦の関係についての背景を書いておきましょう。

日本における神経管閉鎖障害(Neural tube defect : NTD)の頻度が増加していることから、厚生省(現厚労省)は2000年に、「妊娠を計画している女性はバランスが取れた食事とサプリメントで1日400μgの葉酸の摂取をすべきである」とし、その旨を患者に指導するよう都道府県や医師会などに勧告しました。

NTDとは、二分脊椎症や脊髄瘤、脳瘤、無脳症など、先天性の脳や脊椎の癒合不全を指します。

最も多いのは二分脊椎症で、胎生期に左右離れて発生した脊椎(背骨)がくっついて1本の脊柱管(背髄が入っている管)ができるのですが、それがうまくくっつくことができないという状態です。

症状が強い場合は、髄膜に包まれた脊髄が飛び出した状態(髄膜瘤)で生まれてきます。

髄膜瘤は大体は腰部にできるので、下肢や直腸・膀胱の神経麻痺を伴うことが多く、歩けなかったり、排尿・排便が自分でコントロールできない、などの障害を持つことになります。

私が大学病院の母子センターにいた時も、年に一人くらいはこういう赤ちゃんが入院したように記憶しています。

日本でのNTDの発生率は、1974~1979年で出産1万(死産を含む)対2.0程度だったのが、1998年には1万対6.0で、先進国では最も高い数値になっています。現在はもっと高くなっている可能性があります。

NTDは葉酸というビタミンB群の仲間が不足していることが主な原因とされており、西欧諸国では妊娠可能年齢の女性の葉酸摂取量を増やすことで、NTDの発生率を低下させることに成功しました(ちなみにそのような政策を行う以前に最も高かったのは英国の1万対15人でした)。

その反対に日本では増加の一途をたどり、結果的に先進国でNo.1というありがたくない現状になってしまったのです。

かつて西欧諸国に比べると格段に低かった日本におけるNTDの発生率は(人種による影響については不明ですが)、葉酸が十分足りていたことを意味しており、日本の食生活がそれだけ豊かであったことを示唆していると思います(もちろん葉酸の欠乏のみがNTDの原因とは言えないのですが)。

しかしこの数十年で、日本人の食生活は激変しました。その結果葉酸の摂取量が減少し、NTDがじわじわ増えると言う事態が起きているのです。

たかだか1万人に6人と言えど、そのような赤ちゃんが生まれた場合、本人はもちろん家族の負担は相当なものです。一生涯の医療費も相当かかるでしょう。

葉酸自体は廉価なものですから、それを補ってNTDが減らせるのなら、個人としても国家としてもメリットがあるというわけで、アメリカなどでは1991~1992年にすでに摂取を勧告し、小麦粉やシリアルなどに強制的に添加することを義務付けています。

ところが日本では、産婦人科によっては葉酸のサプリメントを推奨しているところもありますが、まだそれほど徹底した指導が行われているとは言えません。

これには根本的な問題があって、まず現場の医師に対する通達が不十分であるということと、妊娠が発覚して産婦人科にかかる頃にはもうその形成期(妊娠7週までが臨界期と言われています)を過ぎている場合が多いので、NTDを予防するという意味では、時すでに遅いわけです(もちろん葉酸自体はNTDの予防以外にも必要なビタミンなので、妊娠7週を過ぎてから摂取しても母体には有用で、無駄ではありませんが)。

ですから理想を言えば、妊婦に限らず妊娠可能年齢の女性にすべからく葉酸を十分量摂取して欲しいわけですが、そのためにはどのような対策をとるべきなのか、というのが、石川先生のご発表の要旨です。

長いので次に続きます。

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最新の研究でわかっていること(2026年10月 追記)

2006年の記事に追記

妊娠前からの葉酸がNTDを防ぐことは、ランダム化試験のまとめで確かめられています。一方、サプリを勧めるだけでは国全体のNTDは減りにくく、日本でも妊娠前から飲んでいる人はまだ少数です。

  • コクラン・レビューでは、葉酸サプリ(単独または他のビタミンと一緒)でNTDが減りました(リスク比0.31)。効果は毎日400μg(0.4mg)以上の量で見られました。出典:De-Regil ほか, Cochrane Database Syst Rev 2015/PubMed 26662928・DOI 10.1002/14651858.CD007950.pub3
  • 欧州25地域の先天異常登録(1980〜2012年)では、葉酸サプリを勧めても、NTDの減少は確認できませんでした。出典:Morris ほか, PLoS One 2018/PubMed 29621304・DOI 10.1371/journal.pone.0194986
  • 日本の複数の出生コホートでは、妊娠前から葉酸サプリをとっていた妊婦は6.3〜18.0%にとどまっていました。出典:Obara, Yakugaku Zasshi 2021/PubMed 33790112・DOI 10.1248/yakushi.20-00184

PubMed の抄録で、数字と結論を確かめた論文だけを載せています(PMID・DOI つき)。上の本文は 2006 年に書かれたままです。

当院でできること

検査と治療
60項目以上の血液・尿検査で、貯蔵鉄・たんぱく質・ビタミン・亜鉛・血糖の動きを確かめ、不足している栄養素(治療用サプリメント)と食事の見直しで体の側を整えます。約3か月ごとに再検査します。
費用(自由診療・税込)
初日の検査 16,500円/再検査 11,000〜16,500円/診察料 5,500円。治療中の月あたりの費用は処方で変わります(最初の3か月は月5〜10万円が目安)。くわしくは 治療費用。
治療を検討する前に知っておいていただきたいこと
自由診療で、保険診療の代わりになる治療ではありません。分子栄養療法は、すべての方に同じ結果が出る治療ではなく、記事の中の例は個別の経過で、同じ結果を約束するものではありません。治療用サプリメントで起こりうること:まれに、IgG 食物アレルギー反応(食べ物に対する遅れて出る反応)が出ることがあります。

執筆・監修:矢崎 智子 医師(2006年の本文)|杏林大学医学部卒業の産婦人科医。2005年にハイジーア外来を開設し、院長として分子整合栄養医学と東洋医学による診療を行った
2026年10月の追記(最新の研究)の監修:秦 俊昭 医師(日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・ハイジーア外来 担当)

あわせて読みたい

よく聞かれること

葉酸は食事だけでは足りませんか?
葉酸は野菜や豆にも含まれますが、食事の葉酸は体に取り込まれる割合が一定しません。そのため妊娠を考える女性には、食事に加えてサプリで1日400μgをとるよう勧められています。
葉酸をとれば、NTDは防げますか?
NTDは遺伝や持病、薬など多くの要因で起こります。葉酸はリスクを下げますが、すべてを防ぐものではありません。
日本では、食品に葉酸が添加されていますか?
日本では、米国のような穀物への葉酸の強制添加は行われていません。そのため妊娠を考えた時点から、サプリで補う方法が勧められています。
費用はどのくらいかかりますか
自由診療です。初日の検査 16,500円(税込)。治療中の費用は処方の内容で変わります。治療費用 をご覧ください。

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