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NEWS & BLOG | 日産婦シンポジウムの連載(演題2・後半)

日産婦シンポジウム 「妊娠と栄養・代謝」② 2/2

(2026年10月 最新の研究を追記) HYGEIA通信

この記事でわかること

  1. 妊娠前から初期に葉酸サプリを使っていた妊娠女性は、13.5%にとどまっていました。
  2. MTHFR遺伝子の型で血清葉酸に差があっても、葉酸400μg/日で差は改善したと報告されました。
  3. 非妊娠女性では、食事の葉酸量と血清葉酸の相関が弱く、食事指導だけでは不十分とされました。
  4. 筆者は健康な赤ちゃんを望む方に、少なくとも1日400μgの葉酸をサプリでとるよう勧めています。

前回の続きで、日産婦シンポジウム「妊娠と栄養・代謝」の2つ目の演題、「妊娠女性・若年女性における葉酸栄養状況とその効果に関する研究」を要約します。

目的は、「わが国におけるNTD(神経管閉鎖障害)抑制に向けた葉酸栄養状況の問題点を抽出すること」ということです。ちょっと小難しいかもしれません。

葉酸とNTDについては前回のログをお読みください。

1 非妊娠女性において、血清葉酸・ホモシステイン値濃度を測定し、食事中の葉酸摂取量との相関、およびMTHFR(後述)の遺伝子多型との関連、葉酸サプリメント内服による濃度の変化を検討した。

→(結果)非妊娠女性においてはMTHFR677-塩基多型により、血清葉酸・ホモシステイン濃度に格差が見られるが、葉酸サプリメントの投与(400μg/day)により格差改善の効果が認められた。

非妊娠女性の食事からの葉酸摂取量は平均316μg/dayと良好であった。しかし葉酸摂取量と血清葉酸濃度の相関は弱く、非妊娠女性の場合、食事内容の改善では血清葉酸濃度の改善→NTDの抑制が期待できないことを示唆する。

2 同様の検討を妊娠中期の女性に対して実施。

→(結果)妊娠中期女性の食事からの葉酸摂取量は十分でなく、平均275μgにとどまった。しかし食事内容と血清葉酸濃度・ホモシステイン濃度との相関は非妊婦より良好。妊娠(中期)女性では必ずしもサプリメントに頼らなくとも、食事指導による(血清葉酸濃度の)改善の余地があると考えられる。(*カッコ内は矢崎の補足)

3 妊娠女性にアンケートを実施し、厚生省の勧告を知っていたか、サプリメントを使用したかを調査し、背景因子との関連を検討。

→(結果)妊娠前から妊娠初期に掛けて葉酸サプリメントを使用していた妊娠女性は13.5%に過ぎず、ここ数年著名に増加したとは言い難い。背景因子の解析では、もともとサプリメント類を使用する習慣のない女性の使用率が特に低率であることが注目される。

以上は配布資料の文章をほぼそのまま書いたものなので、わかりやすくなるよう解説してみます。

MTHFR(Methylene Tetrahydrofolate Reductase)とは、10-メチレンH葉酸から5-メチルH葉酸への過程に作用する酵素で、この遺伝子に多型(異常が起きたりすること)があることが知られています。この遺伝子の異常があると、MTHFRの活性(利き方)が低下し、葉酸の活性型である5-メチルH葉酸の産生が減少します。それによりアミノ酸の一種であるホモシステインからメチオニンへの代謝が障害され、血中ホモシステイン濃度が高まり、NTD(神経管閉鎖障害)が引き起こされると言われています。

(しかしNTDの発生は多因子的なものであり、葉酸摂取のみで予防できるものではありません)

これはつまり、「体質によって葉酸の血中濃度が低くなりやすい人、すなわちNTDの発生率が高くなりやすい人がいる」、と言うことを意味します。

この遺伝子の異常を持たない女性、1つ持っている女性、2つ持っている女性では、葉酸・ホモシステインの血中濃度に差がありました。しかし、葉酸サプリメントを投与すると、各群とも葉酸濃度は上昇し、その差はなくなりました。

これは体質的に葉酸が低くなりやすい人でも、葉酸サプリを摂れば血中濃度はきちんと上昇するので、NTDの予防効果が期待できる、と言うことを意味します。

食事と血清葉酸濃度を調べた結果では、妊娠してない女性の場合、食事に気をつけても葉酸濃度は上がらない、=NTDの予防効果は期待できない、ということが示唆されます。

それに対して妊娠中期の妊婦では、食事に気をつければ葉酸濃度は上がるので、サプリメントを摂らなくても食事指導によって血中濃度の改善は期待できるようです。おそらく妊娠すると食事からの葉酸の吸収が良くなるのでしょう。

しかしこの調査は妊娠16~20週の妊婦で行われたので、妊婦と言ってもNTDの発生に重要な妊娠7週以前ではどうなのか、ということは検討されていません。

最後のアンケート調査は、妊娠前から葉酸サプリメントを摂っていた妊婦は1割強に過ぎず、啓蒙活動は(ほぼ全く)功を奏していない、と言うことです。これはサプリメント自体がまだそれほど市民権を得ていない、ということも背景にあります。

以上をまとめると、

「NTDを抑制する(=葉酸血中濃度を上げる)ためには、食事指導は有効でなく、妊娠前からのサプリメントによる葉酸の摂取が必要である」

「しかし、妊娠しそうな女性たちにおける認知度は低く、かつ葉酸摂取をサプリメントで徹底させることは限界がある」

ということです。

現在の日本の葉酸栄養についての問題点が浮き彫りになった形です。

まあそうだよね、と言う結果ですが、データできちんと示されたと言う事実が貴重です。

ということは、諸外国のように葉酸を食品に強制添加するしかないでしょ、という話なわけです。

会場では、カップ麺などのジャンクフードに添加すべきである、という意見が出されました。栄養のことなど考えたこともない若い人たちに今さらジャンクフードを食べるなと言っても無理ですから、そうするべきだと私も思います。

しかし、そうするには国家の強制力が必要ですが、日本人の食文化が崩壊し、栄養欠乏による健康被害が起きているという問題は、現実には放置されていますから、このまま時間がたてはNTDの赤ちゃんはどんどん増えるでしょう。

多分アメリカ並みに健康水準が悪くならないと、政府は動かないでしょうね。そうでなくても緊急的に解決すべき問題が山積みですから…。

まあ健康に対する責任を政府だけに求めても仕方ないので、後は自衛するしかないです。

自分や家族の健康を守るのは、自分しかいないのですから、私たち一人一人が自分の健康に責任を持つことが必要ですよね。

蛇足ですが、「CSI:マイアミ」という犯罪捜査を題材にした米TVドラマで、被害者女性の血清葉酸濃度が高いことから被害者が妊娠していたことがわかり、犯人逮捕に結びついた、というエピソードがあったくらい、アメリカでは「妊娠=葉酸」なわけです。

大体においてアメリカは反面教師であるわけですが、こういうところは見習うべきだと思います。

というわけで、このブログを読んだ方で健康な(少なくともNTDでない)赤ちゃんが欲しい、と思っている方は、是非葉酸を、少なくとも1日400μgはサプリメントで摂取して欲しいと思います(上限はアメリカCDCは1mgと言っています(医師の管理下にある場合を除く))。

葉酸が足りないと言うことはそれ以外のビタミンも足りてないはずなので、マルチビタミン・ミネラルで摂ることをお勧めします。(*ビタミンAは混合カロテノイドの形で摂るのが良いでしょう)

ちなみに、次の演題に出てきますが、タン白質もきちんと摂ることを強くお勧めします。

ではまた次回!

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最新の研究でわかっていること(2026年10月 追記)

2006年の記事に追記

妊娠前からの葉酸サプリは、今も各国の指針で勧められています。ただ日本では、妊娠前から飲んでいる人は今も少数です。遺伝子の型による差は、サプリで小さくなるものの残ることも分かってきました。

  • 葉酸の介入研究をまとめたメタ解析では、MTHFRのTT型の人は血清葉酸が低めでした。400〜1670μg相当を4週間以上とった後も、TT型は血清葉酸の上がり方が小さめでした。出典:Colson ほか, Eur J Nutr 2017/PubMed 26497154・DOI 10.1007/s00394-015-1076-x
  • 全国の出生コホート(エコチル調査)では、妊娠前から葉酸サプリを使っていた人は7634人(8.27%)でした。サプリとNTDの関連ははっきりせず、著者は毎日の量のデータがない限界を挙げています。出典:Nishigori ほか, Congenit Anom 2019/PubMed 29900595・DOI 10.1111/cga.12293
  • 米国では1998年に穀物への葉酸の強制添加が始まり、二分脊椎は年に767件減ったと推定されています。日本の葉酸の推奨量は240μg/日で、国際的な400μg/日より少ないと指摘されています。出典:Kagawa ほか, Congenit Anom 2017/PubMed 28185308・DOI 10.1111/cga.12215

PubMed の抄録で、数字と結論を確かめた論文だけを載せています(PMID・DOI つき)。上の本文は 2006 年に書かれたままです。

当院でできること

検査と治療
60項目以上の血液・尿検査で、貯蔵鉄・たんぱく質・ビタミン・亜鉛・血糖の動きを確かめ、不足している栄養素(治療用サプリメント)と食事の見直しで体の側を整えます。約3か月ごとに再検査します。
費用(自由診療・税込)
初日の検査 16,500円/再検査 11,000〜16,500円/診察料 5,500円。治療中の月あたりの費用は処方で変わります(最初の3か月は月5〜10万円が目安)。くわしくは 治療費用。
治療を検討する前に知っておいていただきたいこと
自由診療で、保険診療の代わりになる治療ではありません。分子栄養療法は、すべての方に同じ結果が出る治療ではなく、記事の中の例は個別の経過で、同じ結果を約束するものではありません。治療用サプリメントで起こりうること:まれに、IgG 食物アレルギー反応(食べ物に対する遅れて出る反応)が出ることがあります。

執筆・監修:矢崎 智子 医師(2006年の本文)|杏林大学医学部卒業の産婦人科医。2005年にハイジーア外来を開設し、院長として分子整合栄養医学と東洋医学による診療を行った
2026年10月の追記(最新の研究)の監修:秦 俊昭 医師(日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・ハイジーア外来 担当)

あわせて読みたい

よく聞かれること

MTHFRの遺伝子検査は受けたほうがよいですか?
遺伝子の型にかかわらず、妊娠を考える女性には同じ量の葉酸サプリが勧められています。型を調べないと量を決められない、というものではありません。
葉酸はとりすぎても大丈夫ですか?
サプリの葉酸には上限の目安があり、本文にもある通り1日1mgが一つの目安です。持病や薬で多めの量が必要な方は、主治医の指示に従ってください。
マルチビタミンで葉酸をとってもよいですか?
葉酸を含むマルチビタミンでも構いません。ただしビタミンAのとりすぎは妊娠初期に注意が要るため、成分を確かめて選んでください。
費用はどのくらいかかりますか
自由診療です。初日の検査 16,500円(税込)。治療中の費用は処方の内容で変わります。治療費用 をご覧ください。

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