これからの医療の行く先は
分子整合栄養医学を勉強していると、人体の生命活動のあまりにも巧妙な仕組みに感動することがよくあります。
生命活動とはすなわち、栄養素が体の中でどのような化学反応を受け、代謝されていくのか、ということです。
遺伝子を中心とした指令システムの中で、私たちの知るまでもなく、60兆個の細胞の中で膨大な数の化学反応が日々行われ、生命は維持されています。
それらの全ての元になるのは、何はなくとも「栄養素」なのです。
体内における栄養素の活動こそが、生命活動であると言えるのです。
分子整合栄養医学の根本になるのは生化学であり、生理学です。
医学生の頃、あんなにつまらなかった(失礼!)生化学も、栄養素の働きと臨床とを結びつけて考えると、「なるほど!」と思わず膝を打ちたくなります。
そして、このような栄養素の働きについて知れば知るほど、患者様が普段摂っている食事と疾病とを結び付けて考えることをほとんどしない現代医学のあり方に、深い疑問を持たざるを得ないのです。
以前ご紹介した「栄養と犯罪行動」という本の中で、印象に残った文章がありました。
「もしあなたが一枚の木の板を芝生の上に落とすと、一週間後、その下の草がよく育たなかったことに気づくだろう。
近づいてよく見ると、その草の多くの葉は死に、ある葉はかろうじて生きており、そして別の葉は比較的健康であるのがわかるであろう。
ハイテクノロジー医学の最良の考え方は、それらの草の葉の発生学的相違を分析し、非常に経費のかかる実践と結びつけて、死につつあるものを生き生きさせようと努力することである。
まず第一にそこに板を落とすべきでなかった、という認識が一つの洞察なのであるが、それは公衆衛生と環境改良の運動家に限られている。」
膨大な費用をかけて常に新薬は開発され続けています。
中には素晴らしい薬もありますが、鳴り物入りで世に出ても何年か後にその効能・効果が否定され、はあっさりと市場から消え去る薬剤は数知れません。
遺伝子治療やより非侵襲的になっていく外科治療など、現代医学の発展は目覚しいものがあります。
しかし、その前にもっと大切なことがあるのではないか、私たち医師は足元を見失っているのではないか、と思うのです。