先日要約を載せました、2例のステージⅢCの進行した卵巣がん患者に、術後の化学療法に併用して、いわゆる「大量(メガドーズ)」と呼ばれる量の抗酸化物質(私たち分子栄養学を行う者はメガドーズとは言わず「至適量(オプティマムドーズ)」と呼びますが)の摂取と、高濃度のビタミンCの点滴投与を行った、カンザス大学によるケースリポートです。

詳しくは本文をお読みいただきたいのですが、ポイントは、

①通常、進行卵巣がんは予後不良(5年生存率:Ⅲ期37.45%、Ⅳ期25.47%)である。

②両者とも化学療法に先立って手術が行われ、optimally(最大残存腫瘍経が1cm以下)に腫瘍の摘出(腫瘍減量)術が行われた。

③両者とも化学療法(卵巣がんの標準治療であるTJ療法)に先立って経口の抗酸化物質(ビタミンA・C・E・CoQ10)の摂取をはじめた。

④症例1は6サイクルの術後化学療法の最後から週2回の高濃度(1回60g)ビタミンCの点滴による投与を開始。
その後6サイクルの維持化学療法(パクリタキセルのみ)をビタミンC点滴を併用しながら受け、その後1年間は週2回、以降は10日~2週間に1回のペースでビタミンC点滴を継続して受けている。

⑤症例2は、術後に呼吸不全など危機的な状況に陥り、ICUに入院したため、術後の化学療法の施行がが3ヶ月遅れた。
化学療法を始める前、腫瘍マーカーのCA125は術前の81から127に上昇した。
6サイクルのTJ療法を受けた後、レントゲンにて病巣の進行を認めたが、患者はそれ以上の化学療法を拒否し、その代わりに週2回の60gのビタミンCの点滴投与を選択した。
その後継続して週2回のビタミンCの点滴投与を受けている。

⑥両者とも化学療法中に、自制内の嘔気が見られたが、グレード3の毒性(副作用)は見られなかった。
症例1は初サイクルの化学療法中に手足のしびれと痛み、疲労感、呼吸速迫、下肢のむくみを認めたが、ビタミンC点滴投与中は見られなかった
両者とも血液毒性も見られず、CSF(白血球を増やす薬)の必要はなく、腎・肝酵素の上昇も見られなかった

⑦症例1は最初の6サイクルの化学療法の後、CA-125の正常化を認め、診断後3年半たってもCA125は正常範囲を保っている。
腹部と骨盤のCT検査では再発の証拠は認められていない

⑧症例2は化学療法の後、CA-125は正常化した。
化学療法終了後、骨盤内にがん組織の残存と考えられる8cmの病変と後腹膜に転移と考えられる2cmの病変が認められたが、その後それ以上の病態の進展は認められず身体所見は正常で、診断から3年がたった後も、CA-125は正常範囲のままである

カンザス大学では、このような良好な結果を得たため、現在臨床試験を行っているようです。

このように標準治療に栄養療法を併用した場合、予後の改善と副作用の軽減が見られるという報告が多く見られます。

卵巣がんの治療の大前提は、腫瘍をできるだけ取り除くこと、そして化学療法で残存したがん細胞を叩くことです。

この症例のようにOptimallyに腫瘍が切除できたのであれば予後は比較的良いのですが、問題は再発です。

目に見える腫瘍が切除できても、細胞レベルでは体内には大量にがん細胞が残存しているわけで、術後に化学療法を行うのが通常の治療です。

この場合問題となるのは副作用ですが、このケースのように栄養療法は化学療法の副作用を減弱すると言われています。

化学療法でがん細胞を叩き(Ⅲ・Ⅳ期の30~40%でCR(著効)を得られます)、栄養療法で再発を防ぐ、と言うのが卵巣がんにおいては望ましい治療かもしれません。

他の抗がん剤が効かないがんでは、化学療法を行うか否かは迷うところでしょう。

もちろん栄養療法そのものも、がんに対する治療効果が非常に期待できる分野です。

高濃度のビタミンC投与は、それ自体が選択的にがん細胞に毒性を発揮すると言われています。

卵巣以外のがんでも、栄養療法で末期がんの転移が消失したという報告もあり、効果が期待できる分野であることは間違いありません。

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