症例1 39歳女性

主訴

異常に疲れる。起きていることがつらく、横になっていたい。休日は一日中寝ている。
立位(起きた状態)では頭が回らないので、仕事ができない(横になっているとできる)。
頭が働かない。記憶力の低下。ろれつが回らない時がある。
よく眠れない。眠ろうとすると、動悸がする。
ちょっとしたストレスですぐに風邪を引く。

既往歴

易疲労、胃のもたれ、冷え症、足のむくみなどの不定愁訴を栄養療法にて治療し、体調は改善していたが、仕事のストレスや海外出張などが重なり、副腎疲労の症状が発症。

血液データ

 
基準値
2008年11月
ヘモグロビン 1.5~15.0 13.9
ヘマトクリット 34.8~45.0 43.2
総蛋白 6.7~8.3 7.6
GOT 10~40 23
GPT 5~45 19
γ-GTP 80以下 15
尿素窒素(UN) 8.0~20.0 17.5
血糖(グルコース) 70~109 84
グリコアルブミン 12.3~16.5 13.7
フェリチン 18.6~261 54
DHEA-S (30~39歳女性)
50~270
92

唾液コルチゾール濃度の日内変動


*グラフ中のピンク色で示されているラインは、参考基準値ではなく理想値(Dr. Thierry Hertogheの”The HORMONE HANDBOOK”による)を示す

ドクターによるデータ解説

すでに栄養療法を十分に行っていたため、栄養状態は、貯蔵鉄を表すフェリチン値がやや低いこと、低血糖の徴候があること以外には、大きな問題はなかった。
しかし、唾液コルチゾール濃度では、全般的なコルチゾール分泌の低下を認めた。
また、DHEA-Sも、100以下は低値であるため、経過と症状からも、副腎疲労と診断した。

治療方針

副腎疲労と診断されたため、副腎を回復させるために必要な栄養素と、ホルモンの補充を行った。

栄養処方

 
プロテイン 10g×3回 (朝・昼・晩)
ビタミンC 1g×5回 適宜
ビタミンB群(B5レベルで) 500mg×3回 (朝・昼・晩)
ビタミンE 300IU×3回 (朝・昼・晩)
亜鉛 25mg×3回 (朝・昼・晩)
ビタミンA 10000IU×1回 適宜

ホルモン処方
ヒドロコルチゾン(=コルチゾール) とDHEA

ドクターコメント


この患者は実は私ですが、典型的な副腎疲労と考えられる状態です。
数年間にわたる精神的ストレスおよび身体的ストレス(時差など)の積み重ねにより、副腎疲労が発症し、ヒドロコルチゾン(=コルチゾール)の内服で劇的に症状が改善しました。
しかしその後、ヒドロコルチゾンを飲んでいても、疲労感や慢性的な眠気、頭が回らないなどの症状が出現しましたが、これはコルチゾールの不足を通り過ぎて、副腎髄質ホルモンであるアドレナリン・ノルアドレナリンなどの分泌不足が起きたものと考えられます(検査は未施行)。
アドレナリンを合成するにもビタミンCが必要となります。
高濃度ビタミンC点滴療法により、副腎皮質と副腎髄質の両方にビタミンCを充満させ、それらのホルモンの分泌を改善し、症状の改善につながったと考えられます。

しかしながら、慢性疲労の原因は副腎疲労だけでなく、他にもさまざまな原因がありますので、詳しい検査と原因に即した治療が必要です。

経過

ホルモン内服後数日で、起きていられないなどの症状は劇的に改善。
動悸や不眠などの症状も改善。
その後しばらく治療を続けるも、ホルモンを飲んでいても、疲労感、つねに眠い、頭が回らないなどの症状が表れたため、高濃度ビタミンC点滴療法を1週間毎日行った。
それによりまた症状は劇的に改善し、その後はホルモンを飲まなくても体調は安定している。

 

 

 

症例2 43歳女性

主訴

ここ3~4年、寝つきが悪い、眠りが浅い。悪い夢を見る。早朝覚醒あり。目が覚めても動けない。
食後にガクっと眠くなる。そしてむしょうに甘いものが食べたくなる。
疲れやすい。立ちくらみ、めまい。
他院で反応性低血糖症と診断されている(データはなく詳細は不明)。
寝汗、全身倦怠感、無気力、パニック障害。頭痛。腰痛。目のかゆみ。
無月経(4年前より)。
ここ4~5年というもの、仕事、家庭内の問題などで、強いストレスにさらされていた。
これらの症状のため休職していたが、2ヵ月後には職場復帰を希望して来院。

血圧 108/60 脈拍82
顔色は黄色で目の下にクマあり。

既往歴

慢性胃炎、皮膚炎、腎盂腎炎

血液データ

 
基準値
初診時
3ヵ月後
ヘモグロビン 11.5~15.0 13.1 13.4
ヘマトクリット 34.8~45.0 39.4 40.5
総蛋白 6.7~8.3 7.6 8.1
GOT 10~40 15 22
GPT 5~45 7 17
γ-GTP 80以下 18 19
間接ビリルビン 0.2~1.0 !1.1 !1.7
尿素窒素(UN) 8.0~20.0 10.1 14
血糖(グルコース) 70~109 80 88
遊離脂肪酸 0.10~0.90 !1.00 0.85
グリコアルブミン 12.3~16.5 14.5 14.2
フェリチン 18.6~261 57 75
DHEA-S (40~49歳女性)
33~262
128

唾液コルチゾールデータ

ドクターによるデータ解説

まず血液データより、さまざまな栄養素の不足を認めた。
尿素窒素の低値よりタン白質の摂取不足、GOT・GPT値よりビタミンB群の不足、間接ビリルビンの高値より血管内溶血(おそらくストレスが原因と考えられる)、γ-GTPが比較的高値より脂肪肝の傾向、フェリチン低値より潜在性鉄欠乏などが認められた。
また、唾液コルチゾール日内変動の検査では、一日を通して極端なコルチゾールの分泌不足を認めた。
DHEA-Sも低い傾向にあり、症状からも副腎疲労と診断した。

治療方針

副腎疲労と診断されたため、副腎を回復させるために必要な栄養素と、ホルモンの補充を行った。また、慢性疲労には副腎だけでなく鉄不足なども関与しているため、ヘム鉄の補給も行った。

栄養処方

 
プロテイン 10g×3回 (朝・昼・晩)
ビタミンC 2g×3回 適宜
ビタミンB群(B5レベルで) 500mg×3回 (朝・昼・晩)
8(400)mg×3回 (朝・昼・晩)
ビタミンE 300IU×3回 (朝・昼・晩)
亜鉛 25mg×1回 (晩)
カルシウム・マグネシウム 225mg/225mg×2回 (朝・晩)

ホルモン処方
ヒドロコルチゾン(=コルチゾール) とDHEA

ドクターコメント


この方もやはり、さまざまなストレスに長期間さらされ、副腎にダメージを受けた方です。
副腎疲労の患者さまの顔色はやや黄色みがかっていて、目の下にクマがあるのが特徴です。
これはコルチゾールの不足により血圧が下がり、末梢循環が不良になるためと考えられます。
そしてお持ちだったさまざまな症状も、副腎疲労が原因であると考えられました。
このような状態では日常生活事態が困難になることが多いため、仕事に復帰することはおすすめできませんでしたが、諸事情により復帰せざるを得ず、治療用サプリメントとホルモン療法を併用して治療を行いました。
高濃度ビタミンC点滴療法は、通院が難しいため行いませんでした。
しかしながら、なんとか職場復帰もでき、仕事をフルタイムでこなすことができています。
治療半年たった時点でまだ治療中でしたが、ストレスをコントロールし、徐々にホルモンの量を調節し、副腎疲労の改善に持っていくことができるでしょう。

経過

1ヵ月後 治療用サプリメントとナチュラルホルモン療法の併用により、症状は徐々に改善していった。
朝起きられるようになり、散歩などの運動もできるようになった。
睡眠も深く眠れるようになり、悪い夢も減っていった。
昔からあった頭痛も軽減した。
3ヵ月後 食後の眠気はまだあるが、耐えられる。まだ甘いものが食べたい。
仕事に復帰したが、なんとか仕事できている。

株式会社HYGEIA