低血糖症の恐怖 10 ~糖質の過剰摂取はビタミンB群欠乏を引き起こす~
ちょっと間があいてしまいましたが、低血糖症の続きです。
機能性低血糖症(以下、低血糖症)は、血糖値が低い状態が続いたり、急激に血糖値が低下するなど、常にある一定の範囲内にコントロールされているべき血糖値のコントロールがうまくいかなくなる状態です。
その結果、ホルモン分泌や自律神経のコントロールの乱れを引き起こし、様々な自律神経失調症状・精神症状などが起こります。
(初めての方は低血糖症の恐怖1よりお読みください)
前回は、低血糖症と同時に起こりうる栄養欠乏について書きました。
低血糖症と栄養欠乏は、切っても切り離せない関係です。
低血糖症になりやすい食生活は、すなわち栄養欠乏に陥りやすい食生活でもあります。
栄養欠乏が存在しない低血糖症はないのです。
低血糖症の症状は、低血糖そのものによる症状、低血糖により分泌されるホルモンによる症状、そして栄養欠乏による症状が、渾然一体となって起こります。
そしてその治療には、そもそも低血糖を引き起こす原因である単純な糖質を制限することとともに、欠乏した栄養素の補給が必要になります。
それが、狂ってしまった糖代謝を改善し、症状を改善することにつながるのです。
低血糖症を起こしやすい食生活とは、すなわち糖質に偏った食生活です。
そのような食生活は、健康な体を維持するために必要な栄養素が不足するだけではなく、ある栄養素を消耗してしまい、強い欠乏状態を引き起こしてしまいます。
その栄養素が、ビタミンB群です。
低血糖症の治療では様々な栄養素の補給が必要になりますが、中でも重要だと考えられる栄養素の一つが、ビタミンB群なのです。
ビタミンB群は、糖分をはじめ、食べた栄養素をエネルギーに変えるために必須の物質です。
グルコース(脂肪酸・アミノ酸なども)は細胞内に入るとまずピルビン酸に変化し、細胞内のミトコンドリアに入ってアセチルCoAとなり、「クエン酸回路(TCA回路、クレブス回路)」に入ってさらに様々な代謝を受け、その過程で「エネルギーの缶づめ」と言われるATPを産生します。私たちはこのATPをエネルギーとして利用して生きています。
この過程で必ず必要になるのがビタミンB群なのです。
現代の食物のビタミンB群の含有量は低下していますし、ビタミンB群はとても壊れやすいので、精製した食品や加工食品ではその多くが抜け落ちてしまっています。
そのため現代人はただでさえビタミンB群が不足しているのですが(必要栄養所要量のレベルすらもとれていないと言われています)、そこでさらに糖分の摂取が過剰になると、それをエネルギーに変えるためにビタミンB群をさらに消費しなければならなくなります。
お菓子、砂糖、コーラなどの清涼飲料水やカップ麺などの加工食品、白米や白パンなどの精製された糖質が多い場合、食事から摂取できるビタミンB群よりも、体が必要とする量のほうが上回ってしまい、ビタミンB群の欠乏状態に陥ってしまうのです。
ビタミンB群にはB1・B2・B3(ナイアシン)・B6・B12・葉酸・パントテン酸・ビオチンがありますが、全て協調しあって働いています。
糖質代謝で重要な働きをするのは主にビタミンB1ですが、8種類あるビタミンB群はすべてお互い助け合って働くため、どれが欠けてもエネルギー産生はうまくいきません。
エネルギーがうまく産生されないということは、簡単に言うと“疲れやすい”ということです。
低血糖症の人が疲れやすいのは、血糖値が低いために糖からエネルギーを作りにくい(そのため脂肪酸を燃やしたり、アミノ酸を糖に変えたりと、余計な手間と栄養素が必要になる)ことと、ビタミンB群の欠乏のために、エネルギーをうまく作ることが困難になるというのが大きな理由です。
特に低血糖症は「ビタミン依存の体質」と呼ばれ、そうでない人に比べると大量の栄養素を必要とします。特に、ビタミンB群の量が必要なのです。
もちろん低血糖症でなくてもビタミンB不足では慢性疲労、易疲労を起こす原因となります。
これ以外にもビタミンB群は私達にとってとても重要な栄養素なのですが、それについてはまた次回にします。