引き続き、メタボリックシンドロームについてです。

長々と書きつづっている「低血糖症」と非常に深い関わりがありますので、初めての方、正しい減量方法について知りたい方、メタボリックシンドロームに興味のある方は、低血糖症の恐怖1からお読みください(長いですが…)。

前回は、肥満により「インスリン抵抗性」が起こり、さらに「インスリンの過剰分泌」が引き起こされるため、さらに肥満が進行するということについてお話しました。

今日は、肥満になるとなぜインスリン抵抗性が起こるのか?という話です。

肥満といっても皮下脂肪タイプと内臓脂肪タイプに分かれますが、インスリン抵抗性の原因となるのは何と言っても内臓脂肪です。

脂肪細胞の働きは、以前はただの「脂肪の貯蔵細胞」と考えられていましたが、現在ではアディポサイトカインと呼ばれる多彩な生理活性物質を産生し、糖代謝や脂質代謝に影響を及ぼしているということが分かってきました。

脂肪細胞は、TNFαレプチンアンジオテンシノーゲンPAI-1アディポネクチンHB-EGFなどの物質を産生しますが、脂肪細胞増大ともにその産生量が増加します。

TNFαはインスリン抵抗性に関与し、レプチンアンジオテンシノーゲンは高血圧の発症、PAI-1は血栓形成を促進し、虚血性心疾患のハイリスク状態を作り、アディポネクチンHB-EGFは動脈硬化に関与するといわれています。

また、内臓脂肪からの静脈血は門脈系(血管の名称)を通じて肝臓に流入しますが、内蔵肥満では、中性脂肪の分解産物である遊離脂肪酸(FFA)が大量に肝臓に供給されるため、それによって高インスリン血症やインスリン抵抗性を生じることが分かっています。

このようにしてインスリン抵抗性が形作られていくのですが、インスリンが過剰になると、実はもうひとつ、いや~なこと起こります。

太りやすさや、減量の困難さを左右する因子のひとつが、「脂肪細胞の数」なのですが、成人すると脂肪細胞の数はほとんど変わらないといわれています。

ですので、通常成人になってからの肥満の多くは、脂肪が蓄積し「脂肪細胞のサイズが大きくなる」ことによって起こっているのです。

それに対し、小児期に太っていると、脂肪細胞の数自体が増えてしまうので、肥満になりやすく、やせにくい、ということになります。

つまり、小児期に肥満でなかった人は、肥満だった人に比べると、ダイエットがしやすいのです。

しかし!!

インスリンの過剰分泌が存在すると、脂肪細胞のサイズが大きくなるだけではなく、なんと

脂肪細胞の数までもが増えてしまう

ということがわかっています。

インスリンの作用のひとつに、「前脂肪細胞→脂肪細胞への分化促進」というのがあります。

つまり成人であっても、インスリンが過剰に分泌されていると、脂肪細胞のサイズアップだけでなく、脂肪細胞の数が増えてしまうことにより、さらに肥満が進行していくのです

現代人の普通体重の人の脂肪細胞の直径は70~90ミクロンと言われています。

肥満時には100~110ミクロンまで肥大すると言われていますが、それ以上には肥大できないそうです。

全ての脂肪細胞に細胞の肥大が最大に起こったとすると、男性では体重の20%の脂肪組織が2.2倍になるのが限度で、それをBMI(体格指数:体重(kg)÷身長(m)÷身長(m))で表すと27~28くらいになるそうです。

しかし、生体がそれ以上脂肪を蓄えようとするとそれでは限界があるので、脂肪細胞の数を増やしていくのだと言うことです。

ということは、BMIが28以上と言う方は、脂肪細胞の数も増えているので、ダイエットにはさらに強い意志を持って臨んでいただかなければならない…、と言えそうです。

この場合、ダイエットのポイントはもちろん、「インスリン抵抗性の改善」です。

ちなみに、内臓脂肪に比べて皮下脂肪の蓄積は、メタボリックシンドロームになりにくいとされています。

相撲の力士は典型的な肥満体型ですが、運動量がものすごいので、内臓脂肪は意外と多くなく、検査データでも糖代謝や脂質代謝に異常が起きている例は少ないそうです。

カロリーを過剰に摂ってもそれなりの運動をしていれば内臓脂肪は蓄積しにくい、ということのようです。

力士の方の血液データも拝見してみたいものだ、と常日頃思っているのですが、興味深い事実です。

またまた続きます。

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