引き続き日産婦シンポジウムの概要です。

演題は5件ありました。

1件ずつ私なりに要約を書いてみます。

演題1 「妊娠期の低栄養の現状と改善への提言」

演者 国立保健医療科学院生涯保健部母子保健室長 滝本秀美先生

1.1980年から2000年にかけて、新生児の出生体重は約140g減少している(3194g→3053g)。

2.同様に低出生体重児(2500g未満)の児の割合4.2%から7.6%に増加している。

3.妊娠中の喫煙率は1990年の5.6%から、2000年は10.0%に増加している。

4.1976~2000年の間に、「やせ(BMI18.5未満)」の女性の割合は4人に1人に増加している。

5.やせの妊婦で妊娠中の体重増加が少ない(7kg未満と7-9kg)で、低出生体重児の割合が高い(最大15%)。

6.喫煙妊婦は非喫煙妊婦に比べて低出生体重児の割合が高い(約2倍)。

これらのデータの考察として

「若い女性の「やせ」の増加は、低出生体重児出産のリスクのある女性の増加につながっている可能性がある」

「妊娠中は、栄養学的な質が十分な食事をとり適切な体重増加を促すことと、禁煙を進めることが重要である」

ということでした。

これが現実です。

最近はとてもスリムな女の子が多いと思っていましたが、今回の発表でも実際に、若い世代で有意にやせた女性が増えていることが示され、そのような女性の生む子どもは出生時体重が少ない傾向があるということが示されました。

そんなにやせてて大丈夫?と言いたくなりますが、大丈夫ではなさそうです。

「やせ」=低栄養を意味し、これが児の長期的な健康状態に悪影響を与えるからです。
(「Barker仮説」についてはまた書きます)

また、妊婦の喫煙率が上昇していることも驚きました。

胎児は胎盤という細かい血管の集まりを通して母親から酸素や栄養分をもらっているので、タバコを吸うと血管が収縮し、胎児への酸素・栄養素の供給が低下します。その結果、児の発育は制限されます。

当たり前ですが、タバコは百害あって一利なし、です。

しかし、そのようにして口を酸っぱくしてやめろといってもやめられないのがタバコのようです。

あきれてしまいますが、これは母性の欠如なのか、精神的に未熟な妊婦が増えているのか。。

短い外来中に禁煙指導と言うのもなかなか難しいですし、悩むところですね…。

続く。

株式会社HYGEIA