日産婦シンポジウム「妊娠と栄養・代謝」の続きです。

やっと書き始めました。。。

演題3 妊娠中母体低蛋白栄養が胎児胎内プログラミングに及ぼす影響とその発現メカニズム

順天堂大学産婦人科 伊藤茂先生

私が特に同意した演題が、この演題と次の演題です。

4月26日のエントリで書きましたが、現在産婦人科を含めた医療の世界でホットな話題なのが(一過性のブームで終らないといいのですが!)、「Barker仮説」です。

「Barker仮説」とは、「胎児期に低栄養状態であることが成人期における心血管障害のリスク因子である」と言う説です。

英国の疫学者Barker氏が広範な疫学調査を行ったところ、低出生体重児(2500g未満)で生まれた児は、成人になって心筋梗塞・糖尿病・高血圧などのいわゆる「生活習慣病」と呼ばれる疾患にかかる人が多かったことから、このような仮説を発表しました。(BMJ 307;1519.1993, Lancet,1(8489):1077,1986)

動脈硬化、高血圧、心筋梗塞、糖尿病などのいわゆる「生活習慣病」は、その名の通り「生活習慣」に原因があるとされています。もちろん遺伝的な原因もありますが、運動不足、カロリー過多、脂質過多、肥満、喫煙などが、これらの病気を起こすと一般的には考えられています。

しかし、このようなリスクファクターを持っていなくてもそれらの病気にかかる人も多く、その成因は不明な点が多かったのです。

そこでBarker氏は、イギリスで心臓病の多発する地域は貧しい地域が多かったことから、小児期、新生児期、はては胎児期までさかのぼって原因を追究していったところ、出生時体重が少ない(=母体が低栄養であった)児は、将来それらの疾患にかかりやすいことがわかったのです。

Barker氏の説は一見突拍子のない仮説に見えますが、この説を裏付ける研究結果が続々と発表されており、「Developmental Origins of Health and Disease (DOHaD)学説」なるものに発展しています。これは「次世代(次々世代を含む)の健康および疾患の素因は、受精卵環境、胎内環境、乳児期環境で多くが決まる」という説です。

栄養療法の実践者としては至極納得できる話ですし、しかもかなり切羽詰った問題だと思います。

というのは栄養状態が悪い若い女性が本当に多いからです。

日本人長寿神話は確実に崩壊しつつあります。

日本人の栄養に対する考え方を根本的に改めないとならない時代になっていると思います。

長いので続きは次回。

株式会社HYGEIA