武田 健, 日本薬学会
子孫を残す細胞をまもれ!―ディーゼル排ガスも環境ホルモン

環境ホルモンについて、とてもわかりやすく書かれた本です。

現代人の食生活とともに、この数十年で大きく変化したのが、環境問題です。

食の工業化による影響により栄養素のアンバランスが起きていること(カロリー過剰・微量栄養素の不足)、運動不足、ストレス社会など、人類の健康を害する要因は変遷していますが、環境ホルモンという新たな要因も無視することはできません。

この本によれば、工業的に生産される化学物質は増加しており、すでに登録された化学物質は2200万件、わが国で日常的に製造使用されている合成化学物質は6万種(!)に及ぶそうです。結構驚く数字ですよね。

もちろんそれらの化学物質が全て生物に毒性を持っているわけではないでしょうが、中には微量でも体内でホルモン環境を乱す働きがある物質があることが指摘されており、環境ホルモンと呼ばれています。

環境ホルモンは、内分泌かく乱物質とも呼ばれ、いわゆる毒物とは違い、少量でも生物の生殖機能などに影響を与えます。PCBやDDT、ダイオキシン、ビスフェノールAなど、様々な化学物質が環境ホルモンであると指摘されています。

人体への影響についてはまだ未解明の部分が多いのですが、最も心配されるのは胎児への影響です。胎児期にそれらの物質に微量であっても晒されると、生殖器の発育などに影響を及ぼす可能性があるのです。

次世代への影響を考えれば、これらの化学物質を体内に取り込まないに越したことはありませんが、私たちが個人レベルでそれらの物質をとらないようにするには限界があり、完全に防ぐのは不可能です。

現実的には今のところ、体が持つ解毒機能を高めることしか対処法はない、ということになります。

解毒機能を高めるため、または化学物質による影響を受けにくくするためには、ホメオスターシス(生体恒常性)をつかさどる自律神経系や内分泌系(ホルモン分泌)、免疫系統などが、できうる限り充分に機能を発揮できる状態にしておくことが大切です。(当たり前のことように思われるかもしれませんが、なかなか充分にと言うのは難しいのです)

神経伝達物質やホルモン、抗体などの免疫物質、解毒を行う酵素などは、当たり前ですが、もとはと言えば全て栄養素から作られていますので、それらの正常な代謝に必要となる栄養素を至適濃度に整える栄養療法が、これからの時代の健康維持に重要な役割を果たすのは間違いないと思います。

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