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NEWS & BLOG | PMSとは何か(4)

PMSとは何か④

(2026年10月 最新の研究を追記) HYGEIA通信

この記事でわかること

  1. 筆者は、PMSや更年期障害、産後うつなどを「ホメオスターシス(体のバランスを保つ力)の乱れ」とまとめています。
  2. 体のバランスを調整しているのは自律神経とホルモンで、その材料は食事の栄養素だと説明しています。
  3. 筆者は、女性に多い貧血が、よほど重くない限り診療で放置されがちだと問題にしています。
  4. 必要な栄養の量には個人差があり、所要量を満たすだけでは足りない人がいる、というのが筆者の主張です。

引き続き、PMSの原因について考えてみたい。

PMSは、日本では今までそれほど臨床的に重要視されてこなかった。これは、重症例の絶対数がそれほど多くなかったこと、“死に至る病ではない”ということ、症状に個人差が大きく定量的な調査が難しいこと、西洋医学的な治療法が難しい、などの理由があるためと思われる。

PMSだけでなく、更年期障害や自律神経失調症、妊娠悪阻(つわり)、産後うつ症なども、患者さん本人は大変につらく、社会的に見ても少なくない影響があるにも関わらず、医学的な深い追求はされない傾向にある。

これは現代西洋医学の欠点の一つで、患者のQOLを明らかに下げる病態であるのに、生命に危機を及ぼさず、しかも“ありふれている”病態と言うのは、まったくもって重要視されないのだ。

例えば女性によく見られる貧血などがいい例で、貧血は女性のQOLを激しく下げるもっとも大きな原因であるのにも関わらず、臨床の現場ではよほどの深刻な状態でない限り放置される。医者自身がその重要性を認識していないからだ。

またこれらの病態は、実際に西洋医学的な薬物治療では治療が難しいため、敬遠されやすいということもあるだろう。

これらの病態に共通していることは、すべて「ホメオスターシスの乱れ」の結果、起きている病態であると言うことである。

私たちの体には、ホメオスターシス(生体恒常性)という素晴らしい能力が備わっている。というか、ホメオスターシスが生命そのものであると言ってもいいかもしれない。

医療関係者なら生理学で習っているはずのことだが、ホメオスターシスというのは、「人体におけるある条件を一定の範囲内に保っておく働き」のことである。簡単に言うと、「バランスを保つ力」と言ってもいいだろう。

例えば、体温や血圧、脈拍、発汗量、ヘモグロビンや白血球などの数、生化学的な諸々の血中濃度(カリウムだの鉄だのコレステロールだの)、ホルモン分泌、エネルギー産生、などなど。

人間の生命は、ホメオスターシスという人知を超えた働きによって、星の数ほどもあるこれらの体内環境の微調整が休むことなく精密に行われ、維持されている。

私たちは、無数のホメオスターシスの働きが存在して初めて、存在することができるのである。

言い換えれば、60兆個の細胞が各々の本来の機能を果たしていて、これらのホメオスターシスがその機能を存分に果たし、滞ることなく正常に働いていて、体内のあるとあらゆる条件が理想的な範囲内に収まっていていれば、人間は健康なのである。

ところが、現実にはそうはいかない。様々な理由で、ホメオスターシスの乱れは起きてしまうからだ。

ホメオスターシスの働きを実際につかさどっているのは自律神経とホルモンである。我々が生きていく上で、自律神経とホルモンに悪影響を与える条件は、それこそ数限りなくある。

例えば、ストレスは自律神経に大きな影響を与える。その結果、神経機能、免疫機能、ホルモン分泌、消化吸収機能など、様々な機能に影響を与え、ホメオスターシスが乱れてしまう。その結果様々な症状が起きる。

そして、ホメオスターシスの乱れを起こす最も大きな原因が、実は「栄養欠乏」なのである。

あまりにもシンプル過ぎて(?)医学以前の問題だからか、現代人は充分に栄養素が足りていると誤解されているためなのか、医学的にはほとんど無視されているけれど、栄養素の欠乏、もしくはアンバランスが、人体というものの土台を非常に危ういものにしているのである。これは飢えたアフリカ難民においてのみ起きている問題ではない。飽食の現代人にも確実にそれが起きていると言うことが、認識されるべき問題なのある。

当たり前の話だが、私たちの体は私たちが食べたものだけで作られている。当然、自律神経そのものや神経伝達物質、ホルモンの材料も栄養素である。これらの材料、例えばタン白質やビタミンB群などは食事から摂れているつもりで実際には十分摂れていないことが多いし、必要量には個人差があるので、必要栄養所要量というわずかな量を満たしているというレベルでは個人や環境により増大した需要をまかなえていないことがあり、神経伝達物質の産生やホルモン分泌に影響を与える。

同じように貧血の原因も栄養不足である。タン白質や鉄、ビタミンB群など、「血液の材料の不足」のために、多くの女性の貧血は起きている。血液だけでなく、全身の細胞が正常に新陳代謝され、古い細胞が死んで新しく細胞が生まれるためには、全てその材料となる栄養素が必要なのである。材料が充分になければ、細胞がその数と質を保って産生され続けることは困難である。

つまり、老化を含め、臓器の機能低下による失調や病態は、ある一定の割合で「栄養欠乏が原因」なのである。

つづく。

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血液・尿検査(60項目以上)で栄養状態を確かめ、不足を補う外来です。初日のカウンセリングは無料です。

PMS(月経前症候群)について、くわしく見る

最新の研究でわかっていること(2026年10月 追記)

2006年の記事に追記

貧血がなくても、鉄が不足している女性は少なくありません。一方、PMSなどの不調の最大の原因が栄養欠乏だと示す研究はありません。

  • ヘモグロビンが正常な女性100人のうち、41%に鉄不足がありました。授乳の経験がある人に多くみられました。出典:Alsubaie ほか, Front Med 2026/PubMed 41705156・DOI 10.3389/fmed.2025.1700235
  • 貧血がなくフェリチンが低い女性198人の試験で、鉄剤を12週間飲むと疲労の点数が47.7%下がりました。偽薬では28.8%で、うつや不安には差がありませんでした。出典:Vaucher ほか, CMAJ 2012/PubMed 22777991・DOI 10.1503/cmaj.110950

PubMed の抄録で、数字と結論を確かめた論文だけを載せています(PMID・DOI つき)。上の本文は 2006 年に書かれたままです。

当院でできること

検査と治療
60項目以上の血液・尿検査で、貯蔵鉄・たんぱく質・ビタミン・亜鉛・血糖の動きを確かめ、不足している栄養素(治療用サプリメント)と食事の見直しで体の側を整えます。約3か月ごとに再検査します。
費用(自由診療・税込)
初日の検査 16,500円/再検査 11,000〜16,500円/診察料 5,500円。治療中の月あたりの費用は処方で変わります(最初の3か月は月5〜10万円が目安)。くわしくは 治療費用。
治療を検討する前に知っておいていただきたいこと
自由診療で、保険診療の代わりになる治療ではありません。分子栄養療法は、すべての方に同じ結果が出る治療ではなく、記事の中の例は個別の経過で、同じ結果を約束するものではありません。治療用サプリメントで起こりうること:まれに、IgG 食物アレルギー反応(食べ物に対する遅れて出る反応)が出ることがあります。

執筆・監修:矢崎 智子 医師(2006年の本文)|杏林大学医学部卒業の産婦人科医。2005年にハイジーア外来を開設し、院長として分子整合栄養医学と東洋医学による診療を行った
2026年10月の追記(最新の研究)の監修:秦 俊昭 医師(日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・ハイジーア外来 担当)

あわせて読みたい

よく聞かれること

貧血はないと言われました。鉄不足の心配はありませんか?
ヘモグロビンが正常でも、貯蔵鉄(フェリチン)が少ない方はいます。疲れやすさが続くときは、フェリチンを含めて調べる方法があります。
「ホメオスターシスの乱れ」は病名ですか?
病名ではなく、筆者が不調をまとめて説明するために使った言葉です。症状の原因は、検査で一つずつ確かめていきます。
PMSは栄養療法だけで対応できますか?
PMSには、SSRIや低用量ピルなど試験で効果が確かめられた治療があります。当院の分子栄養療法は、それらと並行して行うものです。PMS(月経前症候群)・PMDDの栄養療法外来
費用はどのくらいかかりますか
自由診療です。初日の検査 16,500円(税込)。治療中の費用は処方の内容で変わります。治療費用 をご覧ください。

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