ビタミンCと慢性疲労症候群
なんだかだるくて体が重いし、体調が悪いなあ…、と思っていた時、そういえば横着してマルチビタミンだけを摂っていてビタミンCを十分(グラム単位で)摂っていなかった、ということに気がつき、ビタミンCを摂るようにしたらすっかり元気になった、ということがよくある。
疲れやすい、元気が出ない、…という症状にはいろいろな原因があるけれど、実はビタミンCの欠乏もその原因のひとつである。
私たちが食べた三大栄養素、すなわち糖質、脂質、タン白質は、細胞内のミトコンドリアというところで、全てTCA回路という回路に入ってエネルギーに変えられる。
それぞれの栄養素の代謝経路にはほとんど全てにビタミンB群が補酵素として関与しているので、ビタミンB群欠乏では当然エネルギー産生がうまく行われなくなり、疲労感や脱力、精神神経機能の低下などが起こる。また、エネルギー産生がうまく行われないと言うことは、消費されなかったエネルギーは脂肪となって蓄積するので、太る、ということになる。
現代人の食事は、加工食品・精製食品が多いことなどから、現代人は一億総ビタミンB群欠乏と言ってもいいくらいだ。
しかし、ビタミンB群だけではなく、ビタミンCもエネルギー産生に関与している。
それは主に脂肪を分解してエネルギーに変えるときに働くのだが、よく言われているような「運動を始めて20分後からようやく脂肪が燃焼し始める」というのは間違いで、実は普段の生活の中でも、この脂肪酸をエネルギーに変える経路は働いている。
脳を除く生体のほとんどの組織では、基礎代謝でエネルギーの50%が脂肪の酸化によってまかなわれている。
特に、飢餓時、糖質を制限している時、糖尿病などでインスリンの作用が低下して糖を細胞内でうまく利用できない場合などは、糖をエネルギーとして利用できない(または制限する)ために、脂肪を分解して脂肪酸をエネルギーとして利用する経路が優位になることになる。
脂肪酸が細胞内に取り込まれると、アシルCoAになり、それがカルニチンと結合してアシルカルニチンになってミトコンドリアに取り込まれる。そこでまたアシルCoAになってβ酸化を受けてTCA回路に入り、エネルギーを産生する。
このカルニチンはアミノ酸のリジンとメチオニンから作られるが、このカルニチンの合成にビタミンCが必要なのである。
よって、脂肪酸を燃やしてエネルギーを得るためには、ビタミンCが充分あることが必要である。
ということで、ビタミンC欠乏はエネルギーの産生不足を招き、慢性疲労症候群の原因のひとつになっているのである。
他にビタミンB群の欠乏や鉄欠乏やタン白質不足でも疲労は起こるから、総合的な栄養アプローチが必要だが、最近疲れてしょうがない、と言う方はビタミンCを多めに(下痢しなければ3gくらいは)摂っておかれると良いだろう。
カルニチン、というと、「ダイエット!」と連想する方は多いかもしれないが、ダイエットはカルニチンだけではダメです(笑)。念のため。