先日たまたまある7才のお子さんの血液データを拝見する機会がありました。

私が直接には存じない患者様なのですが、そのお子さんが(ご家族が?)困っていらっしゃることは、

・極端な偏食である(食べる量が少ない、野菜をほとんど食べない、お肉は食べる、糖質系はよく食べる)
・あばら骨がみえるほどやせている
・背が伸びなくて体が小さい

ということでした。

元気はよく体調的にどうということはないそうなのですが、データを見ると

・貧血
・低蛋白
・鉄欠乏
・低コレステロール
・低中性脂肪
・ALPが低い(成長期の割には)

と明らかな栄養失調状態でした。

蛋白と貧血の値は正確にはわからなかったのですが、総コレステロールが130しかなく、そして中性脂肪がなんと11(!!)しかありませんでした。

中性脂肪の理想は100前後です。

中性脂肪11、総コレステロール130というのは、総摂取カロリーが極端に少なく、栄養不足(タン白質不足)であることを表しています。

コレステロールはホルモン(性ホルモンやステロイドホルモン)や細胞膜の材料として必須であり、その不足は成長に影響を及ぼします。
(なぜタマゴにコレステロールが多いのか…?受精卵がヒナになるために必要だからです!)

またALPは600台でしたが、6~9歳の子どもにしては低い…、このくらいの子どもは大人の基準値の上限の3倍はALPがないと発育に問題を来たします。

つまり800~900くらいはないと背が伸びない…、というわけです。

ALPは含亜鉛酵素なので、亜鉛の不足で低下します。

つまりALPの低値は亜鉛の不足を意味しているのです(大人であればとても高い数値ですが…)。

亜鉛は細胞分裂に必要なので、発育、成長には必須のミネラルです。

タン白質不足・貧血・鉄欠乏・亜鉛欠乏(おそらくビタミンB群欠乏もあるでしょう)では大きくなれません。

私の恩師が、「ソマリアの子どもの血液データを持っているけど、この子はそれと同じデータだね…」と言っていました。

この患者様が特殊なケースであることを願いたいものですが、今の子どもの食環境を考えると、怖ろしいことに決してそうは思えないのです。

この日本で、ソマリアの子どもと同じ栄養状態の子どもがいるとは…(決して虐待されているわけではありません!)。

深く考えさせられた一件でした。

この場合、まず親御さんに啓蒙をきちんとしなければいけないね…、という話でした。

株式会社HYGEIA