男性側の要因は約25%

不妊はカップルの15%にみられ、そのうち約25%は精液所見の低下など男性側の要因です(Salas-Huetos ほか, Hum Reprod Update 2017)。女性側だけが体を整えても、片側では足りません。

食事と精子の関係(観察研究のまとめ)

35の観察研究をまとめた総説では、オメガ3脂肪酸・抗酸化物質(ビタミンE・C・βカロテン・セレン・亜鉛・リコピン)・ビタミンD・葉酸が多く、飽和脂肪酸とトランス脂肪酸が少ない食事が、精液所見の低下と逆の関係にありました。食品では魚介・鶏肉・穀物・野菜・果物・低脂肪乳製品がよい方向、加工肉・大豆食品・じゃがいも・高脂肪乳製品・コーヒー・アルコール・甘い飲み物・菓子が悪い方向でした(Salas-Huetos ほか, Hum Reprod Update 2017)。2025年のメタ解析(8研究・1,835人)では、地中海食への順守が高いほど精子の数・運動率・正常形態率が高くなっていました(Agarwal ほか, Adv Nutr 2025)。

亜鉛と補充の試験

20研究(2,600人)のメタ解析では、不妊の男性は精液中の亜鉛が有意に低く、亜鉛の補充で精液量・運動率・正常形態率が改善しました(Zhao ほか, Sci Rep 2016)。18のランダム化二重盲検試験をまとめた解析では、セレン(100〜200µg/日)・コエンザイムQ10(200〜300mg/日)・L-カルニチン+アセチルL-カルニチンで精液所見が改善し、亜鉛(66mg/日)+葉酸(5mg/日)、EPA+DHA にも有望なデータがありました。ただし妊娠率まで調べた試験は少数です(Buhling ほか, Reprod Biomed Online 2019)。

当院でできること

  • 男性も同じ血液・尿検査(60項目以上)で、亜鉛・たんぱく質・ビタミンB群・ビタミンD・血糖の動きを確かめます。
  • 不足している栄養素を検査値にもとづいて補います。精液検査は不妊治療クリニックで。
  • 食事は、魚・肉・卵・野菜を中心に、甘い飲み物と加工食品を減らす方向で管理栄養士が一緒に考えます。

上の試験の用量は研究の条件であり、当院の処方量ではありません。処方は検査値で決めます。

当院の実例(医師の記録・個人差があります)

不妊で受診した37〜39歳の女性4例は、初診時の貯蔵鉄(フェリチン)が 4.4・4.6・4.6・10.5 ng/mL と一桁〜10台でした。ヘム鉄を中心とした栄養療法で、3か月後には 33.6・30.3・32.1・47.0 に上がり、2か月〜1年で自然妊娠しています(人工授精3回・体外受精2回のあと、体外受精6回目で第一子のあとの第二子、など)。くわしくは 不妊治療改善例(4例・検査値つき)。