血液検査の診かた
今日は分子栄養学(正確には分子整合栄養医学)の話しをします。
分子整合栄養医学に基づく栄養療法を行う際に重要なのは、血液検査です。
病院や人間ドックなどで、血液検査をお受けになったことのある方は、沢山いらっしゃると思います。
しかし、この血液データの読み方が、一般の医師と、分子栄養学を行っている医師では、かなーり違うのです。
このデータの読み方が、栄養療法のキモであると言ってもいいでしょう。
(ちなみに、もうひとつのキモは治療に使うサプリメントです。残念ながら日本で治療に耐えうる良質のサプリメントを提供している会社はごくごくわずかです)
症状があって病院にかかった時、血液検査では何の異常も見つからず、原因がわからなかった、という経験をお持ちの方はいらっしゃいませんか?
例えば、頭痛や腹痛などいろんな症状に対し、医師は必要に応じて、検査を行います。
血液検査のみならず、超音波やレントゲン、CTやMRI、細菌検査など、現代西洋医学の検査技術は非常に素晴らしいものです。
しかし、いろいろな検査を行っても、原因が見つからない!!ということは、よくあることです。
その場合にどうするかと言うと、明らかな原因が見つからなければ生命に別状があるわけではないことが多いので、差し当たり症状をとるための治療を行います。
痛かったら痛み止め、かゆかったらかゆみ止め、眠れなかったら眠り薬、と言う具合です。
これがいわゆる「対症療法」というものです。
西洋医学による治療法には、こういった対症療法がとても多いのですが、これは西洋医学的な検査では「機能的な問題」による病態を診断するのが非常に難しい、ということによります。
機能の問題に関してはまたの機会に書きますが、血液検査でなぜ問題が見つからないのか?
それは、血液データの解釈の仕方にあります。
一般の医師は、私も分子栄養学を勉強する前はそうでしたが、血液データを見る時にその数値が「基準値の中に入っているか否か」で、正常なのか異常なのかを判断します。
しかし、この「基準値」というのがくせものなのです。
基準値とは、そのデータをとった母集団のうち、(およそ)95%の人の数値がその範囲の中に入った、という程度の意味でしかありません。
もちろん目安にはなるのですが、基準値の中に入ったからと言って、その数値が「望ましい数値」であるわけではないのです。
「基準値=正常値ではない」のです。
確かに、基準値の中に入っていれば、「病気ではない」と言えるかもしれませんが、基準値の中に入っていても、様々な分子栄養学的な問題点を見つけることができます。
タン白質不足、ビタミンB不足、鉄欠乏、亜鉛欠乏、低血糖、インスリンの過剰分泌、脂肪肝、肝機能低下、ストレスの度合い、などなど。。。
一般のどんぶり勘定的な見方ではわからない、栄養素の欠乏状態やそれに基づく代謝の異常を把握すると、患者さんの訴えてる症状の多くが当てはまるのに驚きます(自覚症状の感じ方には個人差がありますが)。
例えば、頭痛やめまい、うつなどの精神症状、月経困難症、にきび、肥満などの原因が、データから読み取れるのです。
血液データは思った以上に、体内環境を雄弁に語ってくれています。
そもそも、エネルギーの産生や体蛋白の産生、ホルモンや神経伝達物質の生成など、(後天的に)体の機能がどのように働いて生命が維持されるのかと言うことは、ほぼ体の中に入ってくる栄養素によって決められるのです。
そしてそれらの不足やアンバランスにより、様々な代謝の異常が起こり、それらがいずれ病気となって現れるずっと前から、きちんと血液データには現れてくるのです。
しかし、「基準値の中に入ってさえいればOK !」という見方をしている限り、それらを読み取ることができないので、結局「原因不明」になってしまうのです。
ということは、治療は対症療法に頼らざるを得なくなり、根治療法は難しい、と言うことになります。
残念ながら、このデータの読み方は医学部では教わらないことなのです。
まあその判断ができても保険診療では薬を出すことしかできませんから、根本治療(つまり栄養素を使った治療です)は難しいのですけれどね。
アメリカの開業医の60%は、何らかの形で栄養素を治療に取り入れていると言われています。
日本でももっとそういう考え方を持つ医師が増えてくれるといいのに、と思います。