30代半ばの女性の患者様のケースです。

来院時の主訴は

・耳がつまった感じ
・頭に圧迫感(頭痛)
・フワフワする感じ
・耳鳴り
・生理痛
・月経前の症状(過食・イライラ・眠気・倦怠感)

などの様々な症状をお持ちであり、とにかく具合が悪い…、といった感じでした。

メニエール病と診断され、耳鼻科でステロイド剤を含めた治療を受けましたが、頭痛がかえってひどくなったような気がしたので治療はやめられたようです。

このような症状は、検査をしても異常が見つかることは少なく、治療もなかなか難しいことが多いです。

分子栄養学的には、様々な栄養素の不足がこれらの症状の原因であろうという予測はつくのですが、この方には他にも特徴的な症状がありました。

・お腹が空くと具合が悪くなる・吐き気・目がかすむ
・食後背中が痛くなることがある

このような食後や空腹時などに起こる症状は、血糖値の変動に伴って起きている可能性があり、おそらく低血糖症があるだろうという予測をさせるものでした。

血液検査のデータでは

・貧血
・タン白質不足
・鉄欠乏
・ビタミンB群不足
・肝機能障害
・亜鉛不足

などがあり、また、低血糖の傾向も認められました。

患者様が希望されなかったため、5時間糖負荷試験は行わず、タン白質・鉄・ビタミンB・C・E・亜鉛・カルシウム・マグネシウム等の栄養素の処方、および食事の指導(糖質は控えタン白質中心の食事にするなど)をさせていただきました。

そして、3ヵ月後の血液検査の時には、症状の多くが改善されたことを教えてくださいました。

・耳が詰まった感じは全くなくなった
・月経前症候群の症状も改善した
・イライラしなくなった
・過食や空腹感もなくなってきた
・甘いものを食べると「耳に膜がはる」感じがするのがわかった
・血糖値が下がりすぎてしまった時に、目のかすみ・気分不快が起きる
・白いご飯を多く食べるとその後に症状が出る
・食後に背中が痛むこともなくなったが、ある日気が緩んで昼食にパスタを食べたら、その後背中が痛くなり、訳もないのに悲しくなって泣いてしまった。

血液データでもかなり栄養状態は改善され、肝機能障害も改善されていました。

この方の症状は、ビタミンB群や鉄などの栄養素の不足に加えて、血糖の調節異常(低血糖症)が大きな原因であったと考えられます。

低血糖症ではありとあらゆる症状が起こりますが、例えば耳鳴りや、一時的に視野が狭くなる、目のかすみ、一時的に顔面の感覚がなくなる、体のどこかに痛みが起きるなど、現代医学的に説明がつきにくいような症状が起こることがあります。

症状が一時的であることが、症状が器質的な疾患ではなく機能的な問題に由来することの証ですが、これらの症状は血糖値が下がってしまった時にアドレナリンなどのホルモンが分泌されるため、血管が収縮して一時的な血行障害が起こるためと考えられます。

このような症状に対してCTやMRIなどの検査を行っても、当然何も異常所見が出ることはありません。

このような方に対して、適切な栄養素の補給と食事の改善を行うことで、症状が改善していくのです。

この方には5時間の糖負荷試験は行っていませんが、行った場合どのような血糖値のカーブを描くのか、非常に興味深いところです(おそらく反応性低血糖症だと思いますが…)。

症状はかなり改善し、とても喜んでいらっしゃいました。
しかしまだ症状が少し残っていて、データ上も不足の栄養素があるため、栄養療法を継続していただくことになりました。

もっと元気になられて、仕事に趣味にご活躍されることと楽しみにしております。

株式会社HYGEIA