(前回のエントリの続きです。)

PMSが英国でこれほど社会的に認知されているのは、間違いなく英国ではPMS患者が多いからだろう。

そしてPMSが一端を担うと考えられる女性による問題(犯罪や家庭内暴力など)が、放置できないほど深刻だ、と言うことだ。

何故、英国ではこんなにもPMSが深刻なのだろうか?

私は、このような英国でのPMSの扱われ方を知ったとき、英国人の方には大変申し訳ないが、英国の栄養状態は相当悪いに違いない、と思わざるを得なかった。

以前に、母体の葉酸欠乏により起こる先天奇形である神経管閉鎖障害(NTDs)の問題を書いた。

妊婦に葉酸欠乏があると、発生の過程で胎児の神経管がきちんと閉じないで、二分脊椎症などのNTDsを持って生まれてくる率が高くなる。

NTDsの発生率はその母集団の葉酸の摂取状況を反映しており、つまりはその国の栄養状態を表すひとつの指標であると考えてよいだろう。

そしてNTDsを防ぐために世界的に葉酸を食品に添加するようになる以前に、もっともNTDsの発生率が高かったのは英国だった。

かつての日本での二分脊椎症の発生率は出生1万人に対し2人程度だったが、英国は15人だった。

その後、英国では食品への葉酸添加を行うという政策が取られ、その結果、1人程度に減少している。

その逆に日本では、NTDsはじわじわと増えており、1998年の時点で二分脊椎症は3-4人、NTDsは6人と、なんと先進国では最も発生率が高くなってしまった。

日本でNTDsが増えているのは、日本人の食生活が大きく変化し、栄養状態が着々と悪化している証拠のひとつだと言えるのだ。

私は英国に住んだことはないので、英国の食事情を実感としては知らないし、もしそうでないとおっしゃる方がいたら逆にご教示いただきたいのだが、かつての英国における二分脊椎症の発生率を見ただけで、私は英国人の食生活がどんなものなのか(だったのか)、瞬時に理解できた気がした。

ビタミンやミネラルを豊富に含んだ新鮮な野菜や、体を作る基本的な材料であるタン白質や、ホルモン環境を良い状態に保つためにはたらく良質な脂質などの栄養素が不足した、栄養学的に見て貧しい食事であろうということは、容易に想像できる。

そして、胎児の発育に支障を来たすほど、低栄養であること(カロリー=栄養ではない!)が当然、母体である女性自身の体にも変調を来たすであろうということは、至極納得のいく話なのだ。

PMSは、その現れに過ぎない、と私は思うのである。

続く。

株式会社HYGEIA